日本余暇学会、及びツーリズム学会の統合は、近年、産業面でも研究面でも進展著しい「ツーリズム」という領域を余暇研究の重要な分野として明確に位置づけて余暇研究の深化・拡大を図り、余暇に関わる基礎研究においても、また、ツーリズム以外の研究領域についても、さらなる前進を果たそうという意図で行われます。3年来の論議を経て、多くの会員の支持を得られ決定されました。二つの学会の力が単に足し合わさるのではなく、それぞれのパワーとアイデアが掛け合わさって大きな成果が上げられることを期待しております。
21世紀の今日になっても、日本社会の「ゆとり」感の欠乏は甚だしく、「余暇」に関する一般の関心も高いとは言えません。労働時間は長大で、休暇制度も未整備、過労死する人が後を絶たないのが現状です。その背景には「余暇」を重要な生活課題として捉えることが出来ない、余暇への権利意識の低さが指摘されてよいでしょう。
実のところ、1970年代以降にはわが国でも余暇の拡大が進み、余暇活動の多様化や余暇産業の発展、余暇行政の整備が見られた時期があります。しかし、90年代以降は長期不況の圧力と競争原理ばかりが前に出る風潮のもとで、余暇生活への関心は息の根を止められてしまった感があります。この「余暇後退」の時流を押し戻し、余暇問題への一般の関心を高めるためには、余暇をテーマに研究活動を行っている研究者と、余暇活動を基盤に地域や職域でさまざまな事業を進める実践家とが協同して取り組む必要があります。
日本余暇学会は、日本社会に「余暇」を根づかせることを目標に、研究者と実践家が手を取り合う研究=実践組織です。
余暇という問題は、人々のライフスタイルに深く根ざした課題ですが、学問的にも哲学、歴史、心理学、社会学、教育学、さらには経済学、経営学、国際理解や地球環境の問題にまで広がる大きなフィールドを擁しています。われわれの余暇学は、こうしたさまざまな学問領域に関わりを持つ「インターディシプリナリー」な視点を持っています。
われわれの余暇学は、余暇を「余暇の中だけで」論議しているのではありません。余暇と生活、余暇と経済、余暇と教育等々の関連する課題を多角的に追求しています。特に余暇を産み出す労働のあり方と関わらせて余暇を考えることは重要です。余暇と労働の入り組んだ関係の中から、現実の余暇の問題点やその豊かな可能性が見えてくるからです。日本人の「ワーク・ライフ・バランス」の確立を余暇の視点から追求し、文化と福祉の向上・発展に努めることを日本余暇学会はめざしています。